「三つ目の原因は、鷲と鷹の鳴き声に混じって、狼の遠吠えが入っていたためです。」

「狼の遠吠えは、門の東側でも、西側でも聞こえますよね」と町会長。

「おっしゃる通りです。夜、西側に行こうとすると、一番嫌いなLEDライトが光っていて、狼の遠吠えが聞えます。この二つで、西側の苔を荒そうという気はなくなるようです。」

「猪が来る早朝は、砂利と狼の遠吠えだけですよね」と町会長。

「先ほど話したように哺乳類は元々夜行性ですから、明るいというだけ不安感があるのだと思います。また、西側の苔は小道に面する土手の上なので、隠れるところが周りにありません。」

「なるほど。砂利と狼の遠吠え、明るい、隠れるところがないという4つの要素があると苔は荒らされないということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

「確かに、猪が荒らすハイゴケが生えているところには、猪が一匹隠れることができる大きな金モクセイがありますね」と町会長。

「おっしゃる通りです。実は、イノシシは金モクセイの花の匂いが好きなのです。以前忌避剤を撒いて対処していたころ、金モクセイの花が咲くと来るようになったことがありました。」

「金モクセイの花の匂いに誘われて猪が来るのですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。イノシシは鼻が敏感なので、花見ではなく、花嗅ぎをするのだと思います。」

「猪にも風流なところがあるのですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。人間は花見団子ですが、イノシシは花のにおいを嗅ぎながらミミズを食べるのが粋なのかもしれません。」

「東側の端には茶ノ木が植えてあるので、茶ノ木づたいに隠れながら来ることができますね」と町会長。

「おっしゃる通りです。イノシシは線的な行動をしながらやってきます。」

「線的な行動と言いますと?」と町会長。

2019/12/8